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ダイエットの話 [エッセイ]

かつて私はダイエット成功者でした。
1番太っていたときと痩せたときの差が26キロくらいありました。
実際痩せ始めたのは20歳くらいのときでしたが、それまで記憶のある限りずっと太っていたため、痩せたいと思ったことは数えきれないほどあったものの、なぜ痩せないのか全く分かっていませんでした。

そんな私が痩せ始めたきっかけはほんの些細なことで、大学の夏休みの開始直後くらいの昼に脂っこいものを食べすぎて夜まで胃もたれしていたため、夕ご飯にスイカだけを食べたこと、でした。スイカだけでも夕ご飯満足できる、と気付いて、それを3日続けて、体重計に乗ったらあっさり2キロ減っていました。
あれ、体重ってこんなに簡単に落ちるものなの?、と思うと同時に、これはこのままいけるんじゃないか、と感じました。この小さな成功体験が全ての始まりでした。
それから毎日夕ご飯はスイカのみ。
今でいう置き換えダイエットなわけですが、当時はりんごダイエットとかパイナップルダイエットとか、何か1種類だけ食べるダイエットが流行していて、これもうスイカダイエットで本書けるじゃん、みたいな勢いもあってのめり込んでいきました。

ダイエットを始めて2週間で6キロ痩せて、親からは「なんだか体が一回り小さくなったよね」と言われて更に調子が出てきて、その後2ヶ月で6キロ痩せて大学の夏休みは終わりました。
ダイエットを始めたのが夏休みだったというのがまたラッキーで、特に宿題があるわけでもないのでお腹が空いたらゲームをして空腹をごまかしたり、朝ご飯をあえて遅くしてブランチにして1食分少し多めに食べるけど1日2食で1食はスイカなので1日のトータルカロリーはそこまで高くない、みたいな状態を作りやすかったです。

そして夏休み明け。
夏休み前から約12キロ痩せて登校するわけですから、当然見た目はガラッと変わっています。
でも、誰も痩せたことに触れてきませんでした。
「あれこの人〇〇さんだよね?」
みたいな表情があからさまに出るのに、痩せたことに全く触れてこない、という。
あまりに変わりすぎていたので、多分怖かったのではないかな、と思います。
大して体重の変わらなかった大学1年の夏休み明けには、
「あれ、〇〇さんちょっと?せたんじゃない?」
みたいなお世辞が出たりしたのが、私に対して痩せたと聞くのはタブーなのではないかという雰囲気があったように感じました。

それでまぁ、結局後期授業開始から2週間後くらいに、1人の勇気ある女子から、
「〇〇さん痩せたよね?」
と尋ねられ、ようやく、
「うん、10キロちょっとくらい。」
という会話が成立して体型に触れてもらえるようになりました。

そこから更に1年半くらいかけてトータル26キロ痩せたわけですが、やっぱり運動して痩せたわけではなかったので、少し食べるとすぐ太る非常に燃費のいい体質になってしまいました。
元々身長が低いというのもあって、そもそも1日のトータルカロリーは1200キロカロリーもあればいいのですが、成人女性の1日の摂取カロリーは1800キロカロリーであるべき、みたいな常識を押し付けられて定期健診の医師に食べろ食べろしつこく言われたり、あまりに急激に痩せたせいで親からも食べろ食べろ言われたりしたのがむしろストレスだったこともありました。
当時149センチの46キロで、絶対に痩せすぎの範囲ではないし、どれだけ食べたらどれだけ太るのかというのもわかっていてあえて少なくしていたのに、痩せすぎだから食べろ食べろとかなり言われていました。
149センチで30キロ台とかならわかるのですが。
また、痩せたきっかけとかやり方とかは何度も何度も尋ねられて、その度に上記の話をするわけですが、実は誰か好きな人ができたんじゃないか、というのはしつこく聞かれました。髪を切ったら失恋したからとか、そんな単純法則的なものだとは思うのですが、ここまで痩せたからには大きな理由がないといけない、ということだったのかもしれません。
この辺りも多分ダイエットの弊害の1つです。

逆に良かったことは、服装の幅がものすごく広がったこと。
それまでは大きいサイズの服専門店とかメンズ服でいろいろごまかしていて、明るい色の服とか全く持っていなかったのですが、パステルカラーの服とかいろいろ買うようになりました。
就職して自分の自由になるお金が増えてからは、2週間に1回くらいは何かしら服を買っていたように思います。選択肢の多いものから自由に選べる楽しさがありました。

良かったことと悪かったこと、一長一短あったのは、男性の私に対する態度がガラッと変わったこと。
ダイエット前は、道を歩けば声をかけてくるのは宗教関係のみ、大学のサークル勧誘では誰も私にチラシを渡してこない。大学の入学式で隣に座った子と自分とで渡されたチラシの数が雲泥の差でした。
大学自体は女子大でサークルにも入っていなかったので男性と触れ合う機会はあまりなかったのですし、ネットのオフ会とかは痩せてから参加したのでそもそも態度が変わることがなかったのに加えて、むしろ見た目とかそんなことよりゲームや漫画ってことで変化を感じたことはありませんでした。
でも、就職してみたら同期会やら飲み会とかでのチヤホヤされっぷりがあからさまになって、それが逆に怖かったです。女性が圧倒的に少ない職場だというのもあったと思いますが。
ナンパとか謎の女優勧誘とか(多分AV)もありましたし、見た目が変わるとこんなに違うのか、と。
これは結構な人間不信になる材料で、本当にただひたすらに怖かったです。
痩せたらモテモテになりました、人生ハッピーです、なんて微塵も思えませんでした。

……という感じの話をかつての記念企画で書いたら、その後「壮快」という雑誌から取材が入ったことには結構ビックリしました。
これまで書いてきたことは100パーセント実話ですが、有象無象のホームページの個人の話をよく信じてくれたものだな、と今更ながらに思います。
ただ、名前は出していても顔出しはしたくなかったので、痩せる前と後を比べた写真が掲載できないなら、せめてダイエットした人にしかわからないリアリティのあるエピソードを伝えようと思って、生れて初めて自分の鎖骨を鏡で確認して嬉しかったとか、洋服を買いに行って普通のМサイズが着られておしゃれの幅が広がりまくったとか、そんなエピソードをたくさん伝えました。
痩せたらモテモテになりましたー、みたいなのは絶対に言うべきではない、とも思って。
結果、その話はちゃんと記事になって掲載されて、取材のお礼としてちょっとしたカタログギフトをもらいました。

今現在は出産をきっけとしてだいぶリバウンドしてしまいましたが、ダイエットはいい経験だったと思っています。
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Ritter

こんばんは、20年ほど前に同じような事を仰ってた方が居たのでコメントいたしました。
私も以前、二十数kgやせたことがあったのですがその時の周りの反応が「悪い病気にかかったんじゃないかと心配した」というものでして、自分としては心外だったなというのを思い出しました。
私は異性にモテることはありませんでしたが、一度瘦せた経験があると無いのとでは自分自身に対する自信が変わるなという実感はあります。

通りすがりより失礼しました。
by Ritter (2022-10-05 23:16) 

minerva

痩せたことで病気を疑われる、というのもダイエットあるあるですよね。私も言われたことはあったのですが、何もしないで痩せたわけではなかったので、何度も言われることはなかったです。

自分に自信が持てる、というのは確かにありました。
ダイエット前はかなり根暗な性格で、無口&自己主張しないタイプでしたが、痩せておしゃれができるようになったんだからもっと自分を出しても大丈夫、と半ば自己暗示をかけて可能な限りグイグイ前に出るようにしていました。
身近なところだと、何食べたい?、と聞かれたときに、何でもいい、と答えないようにするとか。ピザでもパスタでも何かしら具体例を出すように、と。
ダイエットしていなかったら、多分そういうことも出来ていなかったと思います。
by minerva (2022-10-16 12:22) 

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